三大合併症細い血管が傷つくとどうなる?
- RAJA Inc. 株式会社ラジャ

- 10月17日
- 読了時間: 4分
糖尿病は、血糖値が高くなるだけの病気ではありません。本当の怖さは、高血糖が続くことで、体の中の細い血管が少しずつ傷ついていくことにあります。
とくに影響を受けやすいのが、目・腎臓・神経の細い血管です。これらは「三大合併症」と呼ばれ、生活の質を大きく損ねたり、命に関わる病気へとつながることもあるため、早期の予防と対策が大切です。
網膜症 ― 目の奥の出血から、気づかぬうちに失明へ
糖尿病網膜症は、目の奥にある網膜の細い血管が障害されることで、出血やむくみが起こり、視力が低下していく病気です。初期には自覚症状がなく、進行すると視界がぼやけたり、ゆがんで見えたり、最終的には失明に至ることもあります。日本では失明原因の第2位となっており、見え方に異常が出てからでは手遅れになることも少なくありません。
定期的な眼科受診が大切です
日本糖尿病学会は、網膜症が認められない場合でも年1回の眼底検査を推奨しています。ただし、HbA1cが高い方、糖尿病歴が長い方、すでに網膜症の兆候がある方は、3〜6か月ごとの眼科受診が必要になることもあります。視力が良くても安心せず、見えない段階でのチェックが何より重要です。
腎症 ― 透析になる前に、静かに進行を止める
糖尿病腎症は、腎臓で尿をつくる細い血管が傷つき、老廃物をろ過する機能が徐々に低下していく病気です。初期にはまったく症状がなく、最初のサインとして尿中アルブミン(微量アルブミン尿)が現れます。これを見逃すと、尿たんぱくが増加し、やがて腎不全や人工透析が必要な状態へと進行してしまうこともあります。
定期検査と食事・生活の見直しが大切です
日本糖尿病学会では、尿中アルブミン・クレアチニン・eGFRの定期的な確認とともに、血糖・血圧・食事の管理を重視するよう推奨しています。米国糖尿病学会(ADA)の栄養ガイド(2024年版)では、腎症の進行を抑える食事として、以下のポイントが挙げられています。
動物性たんぱく質を、豆類・大豆製品・ナッツなどの植物性たんぱくに一部置き換える
赤身肉や加工肉の摂取を控える
食塩を1日5〜6g未満に抑える
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を避ける
また、WHO(世界保健機関)は糖尿病と腎疾患の予防において、超加工食品(スナック菓子、加工肉、清涼飲料など)を減らし、自然で未加工の食品や食物繊維を多く含む食事を推奨しています。
たとえば、肉の代わりに豆腐や納豆を取り入れたり、朝食に野菜や海藻を加えた味噌汁をつけるなど、身近な工夫で腎臓を守ることができます。
神経障害 ― 足のしびれから始まる、さまざまな異常
糖尿病神経障害は、高血糖が長期間続くことで、手足の末梢神経や自律神経が障害される合併症です。比較的早い段階で現れることもありますが、糖尿病発症から3年以内に明らかな症状が出るのはまれで、多くは気づかぬうちに進行していきます。
よくみられる症状
足先のしびれやピリピリする痛み
感覚の低下(やけどやけがに気づきにくい)
筋力低下、筋肉の萎縮
立ちくらみ、異常な発汗、便秘・下痢などの自律神経症状
胃のもたれ、吐き気、排尿障害など
日々の足のケアが重要です
神経障害が進行すると、足の傷や感染に気づかず悪化させてしまうことがあります。重症化すると潰瘍や壊疽を起こし、足の切断に至るケースも報告されています。
そのため、日常的に足の状態を観察し、異常があればすぐに医療機関を受診することが重要です。血糖管理に加えて、足の清潔保持、適切な靴の選択、フットケアの習慣が合併症予防に役立ちます。
合併症は「早く気づけば、予防できる病気」です
三大合併症はいずれも、静かに、しかし確実に進行する可能性がある病気です。大切なのは、「まだ症状がないから大丈夫」ではなく、「症状が出る前に調べておく」ことです。
当院では、尿中アルブミンやeGFRなどの腎機能検査、眼科との連携による眼底検査のご案内などを通じて、合併症の早期発見と予防に力を入れています。ご自身の未来の健康のためにも、定期的なチェックを習慣にしましょう。


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