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インスリン療法

 インスリンと聞くと、いろいろな不安が頭に浮かぶ方が多いかもしれません。しかし、インスリン治療は作用の不足したインスリンを補うという、身体に最もやさしい治療です。

 インスリンを一度使用すると絶対に一生やめられないという心配の声を聞くことがあります。しかし、インスリン治療を始めたからといって、一生やめることができなくなる、ということはございません。インスリンを続けた方がよいかどうかは、ご自身から分泌されるインスリンの量や、合併症などによって決まります。
 インスリン療法の基本は、健常人にみられる血中インスリンの変動パターンを再現すること
 
 インスリンは、血液の中のブドウ糖を筋肉や脂肪などの細胞へ送り込んだり、ブドウ糖が肝臓や筋肉で「グリコーゲン」に合成されるのを助けたりする働きをしています。インスリンは、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞で生成され血液中に分泌されます。分泌されたインスリンは、肝臓を経て全身の組織に送られます。インスリンは、インスリンに感受性のある肝臓、筋肉や脂肪組織の細胞に存在するインスリン受容体と結合し、ブドウ糖の細胞内への取り込み、細胞のエネルギー源としての利用、グリコーゲンや脂肪としての合成促進などに働きます。
 インスリン療法は、足りないインスリンを皮下注射で補う治療法です。健常人のインスリン分泌は、24時間いつでも分泌されている基礎インスリンと、食事による血糖値上昇を抑える追加インスリンからなっています。インスリン療法の基本は、いろいろな種類のインスリンを駆使し、健常人のインスリン変動パターンを再現することにあります。
 インスリン療法といえば、「痛い」、「面倒」などのイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、注射針が細くなったことにより、痛みの訴えはかなり減っております。
 
 
  
当院は外来でのインスリン療法に対応しております
 
 インスリン治療が必要と判断された方で、特に仕事や家事にお忙しい方の場合には、入院よりも外来でのインスリン導入の方が受け入れやすいのではないでしょうか。外来でのインスリン導入は、日常生活を続けながら治療ができるという大きな利点があります。
 当院では患者さんの理解度に合わせて、丁寧にインスリン注射の方法を説明いたします。ほとんどの患者さんは外来でのインスリン導入が可能です。またインスリン療法の意義や目的についても、分かりやすく説明させていただきます。当院では、80歳以上の2型糖尿病患者さんでもインスリン治療を開始した経験が数多くあります。
 
  
インスリン治療で悩まれていることはありませんでしょうか

 インスリン治療を行っている方で、外食やコース料理のときはどうすればいいのか。夕食を食べないとき、糖質制限するとき、間食するとき、断食(ファスティング)をするとき、スポーツをするときはそれぞれどう対応すればいいのか。また、その際の内服薬はどうすればいいのか。悩まれている方も多いのではないでしょうか。インスリンを打つ量や、打つタイミングを
変えないと予期せぬ低血糖、高血糖を起こす可能性が高まります。コース料理を食べながら低血糖を起こしてしまう方や、夕食を食べないからといってランタス、トレシーバ、レベミルなども中止してしまい、翌朝の高血糖を起こしてしまう方。糖質制限をして低血糖を起こしてしまう方なども少なくありません。ケース・バイ・ケースでのインスリン対応が必要になります。当院では病状によっては、通常1単位刻みのインスリンを使用することがほとんですが、小児で使用することの多い0.5単位刻みのインスリンを使用することもあります。その方の体格、使用インスリン量、インスリンの効きやすさによっては有効な選択肢となりえます。また、インスリン注入器はインスリンがあらかじめセットされたプレフィルドタイプに加え、インスリンが入ったカートリッジを取り替えて使うカートリッジ交換タイプも多く活用しております。プレフィルドは一般的の多く使用され、交換が必要ないので楽ではありますが、コストはカートリッジタイプの方が安価となります。長期的にインスリンが必要かどうかや、患者様のご希望にそった注射器をご選択頂いております。

 早期からのインスリン療法によりご自身の膵臓を守ることができます
 
 2型糖尿病の治療としては、まずは食事・運動療法、その後薬物療法が選択されますが、近年では早期のインスリン療法の導入が推奨されております。患者さんご自身のインスリン自己分泌が極端に低下している状況でインスリン療法を開始するよりも、分泌が残された状態で開始するほうが、膵臓を守ることができるためです。
 インスリンを分泌するすい臓のランゲルハンス島にあるβ細胞は、高血糖状態が放置されたままにしておくと、働かなくなってしまうことがあります。そのときには、インスリンを外から補給してすい臓のβ細胞を休ませることでβ細胞のインスリン分泌能が回復することがあります。これを糖毒性の解除といいます。インスリンの分泌能が十分に回復すれば、インスリン注射をやめて、再び経口血糖降下薬による治療に戻すことができる場合もあります。
 しかし、残念なことに血糖コントロールがよくない状況が続き、インスリン自己分泌の低下、動脈硬化もかなり進行した状態でインスリン療法を開始される方も多くいらっしゃいます。インスリン自己分泌の低下した状態では、1日1回のインスリンの補充では、血糖値が良好にならない場合もあります。その場合は、2〜4回のインスリン注射で治療を行うこととなります。
 2型糖尿病の方にとって、インスリン療法は最後の治療手段ではありません。一生インスリン注射を続けなくても済むように、すい臓に休息をとらせるため、前向きな姿勢でインスリン療法を始めてみてはいかがでしょうか。
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