予約制 糖尿病専門外来
千葉駅前クリニック
食事療法
7つのポイント
毎日の食事は、自分の体を守るためにできる、もっとも身近で効果的な習慣のひとつです。
糖尿病の予防や進行の抑制、合併症のリスクを減らすためには、「どれくらい食べるか」だけでなく、「何を食べるか(食品の質)」がとても大切です。
たとえば、同じカロリーであっても、同じ糖質量や同じ脂質量であっても、食品の種類や加工の度合いによって、インスリン抵抗性や血管への影響は大きく異なることがわかっています。
つまり、「まず栄養素の質を意識し、そのうえでカロリーや三大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)のバランス、いわゆるPFCバランスを整える」という考え方が、血糖コントロールや動脈硬化の予防において大切になります。
当院の食事療法は、日本糖尿病学会(JDS)、世界保健機関(WHO)、アメリカ糖尿病学会(ADA)の推奨にもとづいた、科学的で無理のない方法を大切にしています。
①毎日の食事を、もっとやさしく ― 超加工食品とのつき合い方
野菜、豆類、魚、いも類、玄米など、できるだけ素材に近い食品を中心にすることで、血糖の安定や体内の炎症を抑える効果が期待できます。
一方で、「超加工食品」と呼ばれる食品は、血糖値の乱高下や脂質異常、慢性炎症のリスクを高めるとされています。超加工食品とは、工業的な工程で製造され、人工甘味料・香料・着色料・保存料・加工油脂・乳化剤などの添加物を多く含む食品のことを指します。タンパク質や食物繊維などの必要な栄養素が不足していることも多く、栄養バランスが偏りやすいのが特徴です。
身近な例としては、菓子パン、スナック菓子、加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコン)、カップ麺、冷凍弁当、清涼飲料水、甘いシリアル、市販のお惣菜やデザートなどが挙げられます。これらはできるだけ控えめにし、自然に近い食材を意識して選ぶことが勧められます。
②体にやさしい伝統食を参考にする 〜和食と地中海食の共通点〜
和食や地中海食は、いずれも植物性食品や発酵食品を豊富に含み、健康効果が高いと国際的に評価されている食事スタイルです。たんぱく源は、魚介類や大豆製品を中心にするのが理想的です。
肉を選ぶ場合は、脂質の少ない鶏肉がおすすめです。
豚肉や牛肉を取り入れるときは、脂身の少ない部位(ヒレやももなど)を選ぶようにすると、脂質の摂りすぎを防げます。
また、地中海食では、良質な脂としてオリーブオイルを積極的に使うことも特徴のひとつです。
③糖質は“ほどよく”が大切です
糖質は体に必要な栄養素ですが、どんぶり飯、カレーライス、チャーハン、麺類など主食中心の食事に偏ると、血糖の急上昇や代謝の乱れを引き起こしやすくなります。
玄米や雑穀米などの複合炭水化物を適量とり入れ、たんぱく質・脂質・野菜・海藻などとバランスよく組み合わせることが大切です。
糖質制限を行う場合でも、肉や卵ばかりに偏らず、豆や野菜などの植物性食品も意識してとり入れましょう。
④脂質は「量」より「質」が大事です
脂質は体の大切なエネルギー源であり、ホルモンや細胞の材料にもなります。大切なのは、「とり方」と「質」。どんな脂を選ぶかで、健康への影響が変わってきます。
■ 摂りたい脂質
-
オメガ3脂肪酸:炎症を抑え、血液をサラサラにする働きがあります。
→ 青魚(さば、いわし、さんまなど)、アマニ油、えごま油、チアシードなど -
オメガ9脂肪酸:血中の悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化の予防に役立ちます。
→ オリーブオイル、アボカド、ナッツ類(アーモンド・くるみなど)
■ 控えたい脂質
-
飽和脂肪酸:脂身の多い肉、ラード、バターなど。とりすぎると血管への負担が増します。
-
オメガ6脂肪酸のとりすぎ:サラダ油、ごま油など。適量ならOKですが、とりすぎは炎症の原因になることも。
-
トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニング、スナック菓子、揚げ物の衣などに含まれます。人工的に作られた脂で、健康への悪影響が指摘されています。
生・蒸す・煮る・ゆでる・焼くなど、油をあまり使わない調理法を取り入れることで、素材の味を引き出しながら、脂質のとりすぎを防ぐことができます。
揚げ物はなるべく控えめに。どうしても食べたいときは、あげたてを少量だけ楽しむようにすると安心です。
毎日の食事には、シンプルでやさしい調理を意識しましょう。
⑤食べる順番とタイミングをちょっと工夫してみましょう
食事のときは、野菜や汁ものから食べ始めることで、血糖値の急な上昇をゆるやかにすることができます。
そのあとに、たんぱく質(魚、いか、豆類、鶏肉など)、そして最後にごはんなどの主食を食べると、体への負担が少なくなります。
また、1日3食にこだわりすぎず、自分の体調や生活リズムに合わせて食事のペースを整えることも大切です。
1日2食が習慣になっている人は、無理に3食に増やす必要はありません。
大切なのは、「何を」「どのように」食べるかを意識することです。
⑥飲みものにも気をつけて ― 甘い飲みものは思ったより糖が多めです
甘い飲みものは、知らないうちに多くの糖分をとってしまうことがあります。
次のような飲みものは、血糖値を急に上げやすく、脂肪肝やインスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)を悪化させる可能性があります:
-
清涼飲料水(コーラ、サイダー、フルーツ風味飲料など)
-
スポーツドリンク
-
加糖のカフェラテ・カフェオレ
-
市販の野菜ジュース(甘味が加えられているもの)
-
甘い紅茶・ミルクティー
-
甘酒(市販品に砂糖が加えられていることがあります)
-
乳酸菌飲料(ヨーグルト風味のドリンクなど)は、菌そのものは腸にやさしい成分ですが、糖分が多く含まれていることがあるため注意が必要です。
「おなかにいい」「健康によさそう」と思って手に取りやすい商品でも、砂糖や異性化糖がたっぷり使われている場合があります。
成分表示を確認する習慣をもち、甘さのとりすぎには気をつけましょう。
日常の水分補給には、糖分のない飲みものを選ぶようにしましょう。たとえば、水、麦茶、ほうじ茶、緑茶、白湯、無糖の炭酸水などがおすすめです。
⑦「完璧」じゃなくていい。大切なのは「現実的」
どんなに理想的な方法でも、今の生活に合わなければ、続けることが難しくなってしまいます。
最初から100点を目指さなくても大丈夫。まずは「これならできそう」と思える60点くらいから始めてみましょう。
小さな一歩でも、続けることがいちばんの力になります。
「完璧じゃなくていい」「できることを、できる範囲で」。
そんな気持ちで、自分のペースを大切にしていきましょう。
まとめ
糖尿病の食事療法は、特別な制限ではなく、健康的な食生活の延長線上にある習慣です。
血糖値の安定だけでなく、血管や腸、肝臓など、体全体の健康を意識した食事を心がけましょう。
大切なのは、完璧を目指すことではなく、毎日の小さな選択の積み重ねです。
その積み重ねが、未来の健康をやさしく守ってくれます。
なお、「超加工食品」についてのご紹介は、特定の企業や商品を否定するものではありません。
みなさんが、自分の体を大切にしながら、よりよい選択ができるようになるためのヒントとしてお伝えしています。
※慢性腎臓病の方はカリウムを減らすために、野菜は生でなく一度ゆでてから食べるのがおすすめです。
細かく切ってたっぷりのお湯でゆで、ゆで汁は使わないようにしましょう。
